| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(口頭発表) A03-02 (Oral presentation)
里山景観の象徴種として知られる猛禽サシバは、森や水田など複数の景観要素を利用し、その境界線の多い場所を選好することが知られている。これまでの研究で、演者らは全国の重要生息地のデータを解析し、サシバの分布北限では、上記のような景観要素の境界線との関係が弱くなることを示した。
この要因として、演者らは種プールのちがいによって生じる餌生物の差異に加え、サシバと同所的に繁殖する別の猛禽、ノスリの影響を考えている。ノスリは、体サイズや利用する餌生物がサシバと類似しているが、サシバの分布北限にあたる東北地方では、サシバは夏鳥であるのに対し、ノスリは一年を通して生息する留鳥である。ノスリの生息地選択には、繁殖期だけでなく越冬期など繁殖期以外の一年をとおした環境条件が重要になる可能性がある。また、同所的に生息する猛禽どうしのあいだには、巣の乗っ取りや巣内雛の捕食など負の影響が多いことが知られており、ノスリのなわばりを避けてサシバが分布している可能性もある。
演者らは、両種が比較的高密度で同所的に繁殖する花巻市東部の農地景観を対象に、ノスリの一年をとおした分布を調べるとともに、繁殖期におけるサシバとノスリの分布の関係を調べた。さらに、冬季のノスリの採食に影響する要因として雪による地面の被服に注目し、農地の雪の被服度合とノスリの分布の関係、雪の被服度と地形の関係を調べるとともに、冬季に雪の被服が多くなる場所が繁殖期のノスリの分布に関係しているか、繁殖期の餌生物密度の高い景観要素の分布など環境条件の影響も組み込んだモデルで、解析を行なった。その結果を報告する。