| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(口頭発表) A03-07  (Oral presentation)

長期群集フェノロジーデータを用いた半島マレーシアにおける植物の開花・結実の解析
Analysis of Species-Specific Environmental Trigger of Reproduction Using Long-Term Phenology Data in Peninsular Malaysia

*山口香春(九州大学), 森本彩夏(東京都立大学), 保坂哲朗(広島大学), 沼田真也(東京都立大学), 佐竹暁子(九州大学)
*Koharu YAMAGUCHI(Kyushu Univ.), Ayaka MORIMOTO(Tokyo Metropolitan Univ.), Tetsuro HOSAKA(Hiroshima Univ.), Shinya NUMATA(Tokyo Metropolitan Univ.), Akiko SATAKE(Kyushu Univ.)

東南アジアフタバガキ林では、約3–10年の不規則な周期で多くの種が同調して開花する一斉開花と呼ばれる現象が生じる。フタバガキ科サラノキ属では2– 3ヶ月の低温と乾燥が開花の引き金となっており、同属の中でも種によって環境要因への応答性が異なることが明らかとなってきた。しかし先行研究は特定の科や種のみに偏っており、多様な系統の植物の開花・結実フェノロジーについては、定量的な分析が不足している。また世界的な気候変動は、東南アジアに気温の上昇と降雨量の変動をもたらすとされるが、熱帯雨林の繁殖フェノロジーに与える影響はよくわかってない。そこで本研究では1976年1月から2009年10月の約34年間、半島マレーシアに位置するForest Research Institute Malaysia樹木園で得られたフタバガキ科を含む41科210種の開花・結実データと気候データの記録を分析し、低温と乾燥を開花の要因として見なすフタバガキ科の開花予測モデルを作成した。フタバガキ科の開花は3グループ(低頻度型、中間型、高頻度型)に分類され、中間型は乾燥のみを、他2グループは乾燥と低温を必要とすることがわかった。また、3つの全球気候モデルから予測された2つの気候シナリオ、低CO2排出量の代表的な濃度経路(RCP)2.6と継続的にCO2を排出したRCP 8.5の環境下で、各開花グループの最良のモデルを用い2100年までの将来の開花を予測した。結果として大きな開花イベントの80%以上の損失が予測された。また、低温と乾燥を必要とする低頻度型と高頻度型は、乾燥のみを必要とする中間型に比べ気候変動に対し脆弱で、開花イベントの頻度の大幅な減少が見られた。
 以上より本研究では、半島マレーシアにおける多様な系統の植物の開花・結実の解析を行い、開花フェノロジーの継続的な変化を示し、温暖化が生態系での生物多様性の損失を促進する一因となることを示唆する。


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