| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(口頭発表) A03-10  (Oral presentation)

ユキツバキ落葉分解に関わる菌類相の遷移  ー内生菌の関与と菌種間相互作用の検討ー
Fungal succession involved in the decomposition of Camellia rusticana leaf litter -Roles of endophytic fungi and interspecies interaction-

*堀田崇仁(新潟大学, 佐渡自然共生センター)
*Takahito HOTTA(Niigata Univ., SadoIsl.Ctr.forEcol.Sustain.)

日本に広く分布する代表的な樹種の一つであるヤブツバキでは、内生菌や分解菌に関する多くの調査が行われている。一方で、ヤブツバキと近縁な樹種であるユキツバキにおいては落葉分解に関わる菌類相や分解過程は明らかにされていない。また、木材腐朽菌を対象とした菌類遷移では菌種間の相互作用との関係が知られているが、生葉から落葉分解までの葉の遷移に伴い出現する菌類を対象として、その遷移と種間相互作用の関連性を調査した例はない。以上より、本研究ではユキツバキの落葉分解に関与する菌類相やその菌類遷移の特徴を明らかにすることを目的として、以下の項目について調査を行った。
1.ユキツバキの生葉と落葉に生息する内生菌及び分解菌の菌類相
2.生葉と落葉の各段階で出現した菌類を用いた対峙培養による菌種間相互作用
各地点で採取した葉から菌株を分離、培養した。分離した菌株の形態的特徴からグループ分けをし、当年葉、二年葉、新規落葉、分解落葉の各段階で優占した形態グループの菌株から1菌株を選出し、分類群の同定を行った。同定はrDNAの5.8Sを含むITS1及びITS2領域の塩基配列を決定し、BLAST検索の結果に基づいて行った。葉の各段階の優占菌または代表菌の菌株を用いて対峙培養実験を行い、菌種間相互作用を調査した。対峙培養約4週間後の、コロニーの成長距離を測定した。
ユキツバキの当年葉ではElsinoe spp.が、二年葉ではPhyllosticta spp.が優占した。新規落葉において、佐渡地点ではCoelophoma spp.が、入広瀬地点ではLambertella spp.が優占した。対峙培養実験による菌種間相互作用の結果は、概ね葉の遷移順で先に出現する菌よりも後に出現する菌の方が競争力は強いことが示された。菌種間相互作用の結果と葉の遷移に伴う優占菌及び代表菌の増減は概ね整合的であったため、ユキツバキの落葉分解過程においても木材腐朽の例と同様に、菌種間相互作用が関係している可能性があると推測された。


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