| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(口頭発表) A03-11 (Oral presentation)
植物の生きた組織内部に無病徴で存在している菌類はエンドファイトと呼ばれ、あらゆる陸上植物において認められている。その中でもイネ科植物に特異的なEpichloë属菌類には二次代謝物であるアルカロイドによる、感染による宿主植物への乾燥耐性の付与、病原菌に対する抵抗性の付与が報告されており、イネ科植物とEpichloë属菌類は相利共生の一例として知られている。一方で、Epichloë属菌類の分解系への影響については、アルカロイドが蓄積した植物遺体は分解が遅いことが報告されており、Epichloë属菌類が他の菌類による分解を阻害している可能性があるが、Epichloë属菌類が枯死後のイネ科落葉の分解に果たす直接的な役割や他の菌類群集への影響についてはまだよく分かっていない。
エンドファイト群集の評価は元来分離培養法で行われてきたが、この方法では培地や菌類の成長速度の違いなどによって分離されない菌類がいることが問題であった。しかし、近年のDNA解析技術の向上により、植物組織から抽出した菌類のDNAを並列的に解析(DNAメタバーコーディング)できるようになった。そこで本研究は、Epichloë属菌類がイネ科落葉の分解菌群集に与える影響を明らかにすることを目的とし、DNAメタバーコーディングを用いたアオカモジグサの葉におけるEpichloë属菌類の検出と老衰段階が異なる菌類群集組成の比較を試みた。また、分離培養法も並行して行うことで検出できる菌類の違いについても考察する。