| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(口頭発表) B01-03 (Oral presentation)
地球規模の環境変動が加速する中、生態系の安定性は、生物の群集の時間変動を定量することで知ることができる。なかでも昆虫群集は、生態系にとって不可欠でありながらも世界中で減少しており、特に重要な研究対象であるが、十分に調べられていない。群集の高い時間変動性は、一方向的な群集の変化傾向により生じることもあるが、季節性やランダムな変動も原因である可能性があり、更に土地被覆などがこれらのパターンに影響が与えうる。本研究では、沖縄本島内の観測ネットワークを用いて、様々な人為攪乱下でのアリ群集の時間変遷を調べた。2年間の高密度サンプリングにより、90種を含む120万以上の個体を観察した。その結果、多様性と変動性には負の相関があるという理論予測とは異なり、在来種の豊富な森林サイトの方が総量密度と種の構成の両方において変動が大きいとわかった。この結果は、攪乱の大きい開発サイトと比較して、森林サイトでの種の同期性と季節性が高いことによるものである。さらに同種内でみても、森林サイトでは総量が少ないものの季節性が高い一方で、開発サイトでの時間変動は確率的に決まりやすいことがわかった。以上の結果は、減少などの群集変動を促進する傾向に加えて、人為的な攪乱が、極端な温度変動の少ない亜熱帯バイオームにおいても季節的なパターンを混乱させる可能性がある事を示唆する。