海洋，湖沼，森林そして土壌などさまざまな生態系研究において時系列データ解析から状態変化の方向性を因果と捉えて研究が進められている．そして，次世代シーケンサーの台頭により，さまざまな生態系への理解はシーケンスデータ解析によって行われており，時系列データとの組み合わせによって生態系をネットワークとして考察する試みもなされている．近年，非線形力学系における解析としてEmpirical dynamic modeling（EDM）が注目されている．EDMは集団レベルで種内および種間の作用強度を推定することで系の変化を捉えるものであり，そのなかでも状態空間の再構成から因子間の関係性を因果関係として捉えるConvergent cross mapping（CCM）は生態学だけでなくさまざまな分野で広く利用されている．しかしながら，割合や組成データなど相対的なデータではデータの自由度の観点からCCMをこれらの相対データに適用することが難しいことが多い．本講演では因果的関連性の推定であるCCMを組成データでも適用可能な変換手法を新規に提案するために，個体群数理モデルから時系列組成データを生成し，提案手法の検討を実施する．そして，Didinium nasutumとParamecium aureliaとの捕食者被食者関係のデータおよび乳児糞便サンプルでの微生物群集構造データから，実データ解析でも適用可能かを検証する．