| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(口頭発表) B01-07  (Oral presentation)

多地点多種の環境DNAデータを利用した河川魚類の分布推定モデル
Modeling the distribution and abundance of river fish using environmental DNA metabarcoding data.

*遠藤智也(東北大学), 香川裕之(東北緑化環境保全), 成田勝(東北緑化環境保全), 長田穣(水産機構・水資研), 近藤倫生(東北大学)
*Tomoya ENDO(Tohoku Univ.), Hiroyuki KAGAWA(Tohoku Ryokka Kankyohozen), Masaru NARITA(Tohoku Ryokka Kankyohozen), Yutaka OSADA(FRA), Michio KONDOH(Tohoku Univ.)

 近年、水棲生物の分布調査において、水中に存在する環境DNAの利用が期待を集めつつある。多地点でのサンプリングと、多サンプル・多種のDNAを同時に解析できるDNAメタバーコーディング技術を組み合わせることで、多種の在/不在を広域的に調べることが可能である。しかし、環境DNAを利用した生物分布推定では、観測ノイズなどを考慮した統計解析が必要となる。そこで本研究では、多地点・多種の観測データを統合的に扱えるJoint Species Distribution Modelling (JSDM)を河川魚類の環境DNAデータに適用し、生物分布や各魚種のニッチを推定した。
 環境DNAサンプルは、東北地方の北上川水系、鳴瀬川水系および阿武隈川水系で、それぞれ河口から2kmおきに採水した。3水系で合計160地点分のサンプルを取得し、魚類DNAを対象としたライブラリ調製とメタバーコーディング解析を行った結果、72種群が検出された。各採水地点におけるDNAの検出/非検出がその魚種の在/不在を示すと考え、JSDMを適用して各魚種の分布やニッチを推定した。この際、流速や水深といった物理環境データや河川周辺の植生データ、および検出された魚種の形質データも利用した。解析にはベイジアンアプローチを採用し、マルコフ連鎖モンテカルロ法を用いて事後分布を求めた。
 解析の結果、検出された魚種の分布推定結果を2kmの空間解像度で得ることができた。ニッチの推定においても、汽水海水魚が水深の浅い河口付近を好むなど、多くの種で妥当な結果が得られた。ただし、交差検証で予測力を評価したところ、一部の種については正確な分布予測ができていなかった。これらの魚種については、より適切な環境データ、たとえば塩分などを測定することで、予測を改善できる可能性がある。


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