| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(口頭発表) B01-09  (Oral presentation)

マダガスカル北西部熱帯乾燥林における乾季と雨季の爬虫類の活動性について
Activity of reptiles during a dry and wet season in a tropical dry forest of north west Madagascar

*福山亮部, 北島薫(京都大学)
*Ryobu FUKUYAMA, Kaoru KITAJIMA(Kyoto Univ.)

熱帯乾燥林は乾季の数ヶ月間ほとんど降水が無く、多くの爬虫類にとって生存に厳しい条件となる。多くの種は活動を抑えることが知られているが、積極的に活動を行う種も少なくない。餌や水の獲得に不利であるにもかかわらず活動する理由には、一部の外敵を避けて採餌や繁殖を行えることのほか、競合種が休眠中に手放したニッチを利用できるなどといった、種間関係上の利点がある可能性がある。従って各種の乾季・雨季の活動を比較し、各種の戦略について考察することは、乾燥林における爬虫類の種間関係を明らかにする上で非常に重要である。本研究ではマダガスカル北西部アンカラファンツィカ国立公園の熱帯乾燥林で乾季と雨季にルートセンサスを行い、爬虫類の個体数や利用環境を記録することで、季節変動が種間関係に与える影響を考察した。調査では林内に1.2 kmの調査ルートを設置し、時速1 km/h 程度で歩きながら爬虫類を目視で探し、各種データを記録した。その結果、乾季に11種126個体、雨季に13種284個体の爬虫類が記録された。乾季には、ヘビや、ヘビの被食を受けにくい大型の地表棲トカゲがほとんど確認されなかったのに対し、ヘビの主要な捕食対象であるヤモリ、カメレオンなどは多く確認された。また、全体の個体数の上位2種である小型種のトランピチビヤモリ Lygodactylus tolampyaeと中型種のコーチヒルヤモリ Phelsuma kochiは、樹幹という同じニッチを用いているが、前者は雨季、後者は乾季の方で多く見られた。これら2種は活動する樹幹の高さに差が見られ、後者では乾季に不足する餌の獲得のため、前者が雨季に利用している地表部近くでも活動していることが示唆された。これらの結果から、乾季の爬虫類の活動を支える要因として、外敵であるヘビからの回避や、餌資源を巡る競争排除の緩和が重要であることが示唆された。


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