| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(口頭発表) B02-01  (Oral presentation)

糞から探る野生マルミミゾウの採食戦略—小さい個体は選択的に採食をしているのか
Diet of forest elephants by fecal analysis in Moukalaba, Gabon: Does body size matter?

*野本繭子(京都大学)
*Mayuko NOMOTO(Kyoto University)

ゾウは一夫多妻で性的二型が大きい。そのような草食動物では、体サイズの違いによって採食パターンに種内変異がみられると言われている。しかし、アフリカ熱帯林に生息するマルミミゾウでは、草原生のサバンナゾウと比べて、成長に伴う体サイズの違いに着目した食物選択の研究は少ない。本研究の目的は、糞分析によってマルミミゾウの採食内容を明らかにし、糞サイズ(体サイズと相関)による違いが見られるのかを検討することである。発表者は、ガボン共和国ムカラバ地域にて2018年から2020年に計3回、延べ14ヶ月の調査を行った。踏査中に新しい糞を見つけたら直径の計測を行い、一部を持ち帰った。持ち帰った糞は流水で洗って乾燥させたのち、内容物を(1)双子葉植物の葉、(2)木質、(3)果実、(4)単子葉植物の葉(クズウコン科を含まない)と繊維、(5)クズウコン科の葉、(6)髄の6項目に分類した。含まれる割合の小さかった(5)と(6)を除く4項目において、各項目の占める相対体積割合(5%単位)が季節や体サイズによって異なるのかをモデル選択によって分析した。糞の平均直径は11.1cm(N=191、SD=2.1)であった。双子葉の相対体積は、乾季の果実不足期に高く、雨季の果実増加期に低くなった。木質の相対体積は季節による変化はなかったが、体サイズが大きくなるにつれて増加した。単子葉の相対体積は体サイズが大きくなるにつれて減少し、雨季の果実増加期に多くなった。これらの結果から、ムカラバ地域では体の小さい比較的若い個体のほうが体の大きい個体に比べて木質を採食する割合が低く、単子葉を食べる割合が高いことが示唆された。これは、ムカラバ地域には毎年雨季の初めに火入れが行われるパッチ状の草原が点在しており、そこにある単子葉草本の新芽が若いゾウにとって消化しやすいためではないかと考えられる。


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