| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(口頭発表) B03-03  (Oral presentation)

体重と系統関係がサメ・エイ類の妊娠期間に与える影響について
Effects of body mass and phylogeny on gestation period of elasmobranch fishes

*徳永壮真(長崎大学), 渡辺佑基(国立極地研究所, 総合研究大学院大学), 川野眞依(九州大学), 河端雄毅(長崎大学)
*Soma TOKUNAGA(Nagasaki Univ.), Yuuki WATANABE(NIPR, SOKENDAI), Mai KAWANO(Kyushu Univ.), Yuuki KAWABATA(Nagasaki Univ.)

 サメ・エイ類の妊娠期間の長さは種によって多様であり、その要因を明らかにすることは個体群動態や生活史戦略を理解するために重要である。一般に、寿命等の生物学的時間はその個体の代謝率に依存し、代謝率には体温と体重が影響する。サメ・エイ類においては、水温が妊娠期間に影響することが知られているが、体重の影響はわかっていない。そこで本研究では、代謝率と体重の関係をもとに、「サメ・エイ類の妊娠期間は体重の0.1-0.2乗に比例する」という仮説をたて、検証した。また、親の代謝率が他の種より高い内温性の種において、その妊娠期間が他の種よりも短いかどうかを調べることで、親と子のどちらの代謝率が妊娠期間に影響を及ぼすかを検証した。
 過去の文献から36種の妊娠期間のデータを収集した。系統的な影響を考慮した手法を用いて体重と妊娠期間の関係を調べ、その傾きを予測値(0.1-0.2)と比較した。また、妊娠期間を目的変数とし、親の体重・出生体重・内温性の有無を説明変数とした重回帰分析を行い、それぞれの説明変数の影響を調べた。
 親の体重と出生体重のどちらにおいても、回帰直線の傾きは0.1から0.2の範囲に収まった。妊娠期間に影響するのは出生体重のみであり、内温性の影響は見られなかった。
 本研究により、サメ・エイ類の妊娠期間は代謝率で決まることが示唆された。また内温性の影響が見られなかったことから、内温性を持つ親の代謝率ではなく、内温性を持っていない(遊泳していないため筋肉で熱が生じていない)と考えられる子の代謝率の影響が示唆された。


日本生態学会