| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(口頭発表) B03-04  (Oral presentation)

ホルモン産生と行動間のフィードバックによって多様な順位制構造が現れる
Various patterns of dominance hierarchy emerged by the positive feedback between hormone and behavior

*堀田淳之介(九州大学, 東京都立大学), 立木佑弥(東京都立大学)
*Junnosuke HORITA(Kyushu Univ., TMU), Yuuya TACHIKI(TMU)

動物個体群では、個体間が相互さようすることにより社会構造が構築される。社会構造には生物種によって多様なパターンが知られている。例えば、ゾウアザラシのハーレムでは集団中の1個体のオスのみが優位に振る舞い、繁殖を行う。また、アマゴの集団では順位制構造が形成され、優位な集団と劣位な集団間での不連続な棲み分けが見られる。さらに、ニワトリの群れではつつき合いの結果、連続的な順位制が形成される。
動物の行動は内分泌系によって制御される。例えば雄性ホルモンは闘争の能力を高め、さらには闘争頻度を増加させる。一方で、闘争での勝利経験がホルモン産生を促進させることも知られている。このホルモンと闘争のフィードバックにより勝ち癖・負け癖が形成される。
本研究では、闘争とホルモン産生のフィードバックが個体群における順位構造をどのように形作るのかを調べるため、各個体のホルモン量を考慮した個体ベースモデルを構築した。闘争で勝利(敗北)することでホルモン産生が促進(抑制)され、後の闘争に有利(不利)にはたらく。これと同時にホルモン産生の高い個体ほどより積極的に闘争に参加する。闘争を繰り返し、各個体のホルモン量やサイズに不均質性が生じる過程を記述した。
その結果、i) 1個体のみが優位に振る舞い、その他の個体が劣位となる状態、ii) 優位な集団と劣位な集団で不連続に分かれる状態、iii)優位な個体から劣位な個体までが連続的に分布する状態、iv) 順位制構造が現れない状態の4つのパターンが現れた。本モデルによって動物界にみられる多様な順位制構造について単一の枠組みで理解できるかもしれない。ホルモン産生が闘争の帰結と頻度に与える影響が個体群構造のパターンを形作る重要な要因であると考えられる。


日本生態学会