| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(口頭発表) C01-03  (Oral presentation)

イルカの環境応答を検出する:音響データに対する非線形時系列解析の適用
Detecting dolphin environmental response: Applying nonlinear time series analysis to acoustic data

*浅井和成(東北大学), 赤松友成(笹川平和財団), Dede AYHAN(Istanbul Univ., TMRF), Ayaka OTZTURK AMAHA(Istanbul Univ., TMRF), 長田穣(中央水産研究所), 近藤倫生(東北大学)
*Kazunari ASAI(Tohoku Univ.), Tomonari AKAMATSU(The Sasakawa Peace Foundation), Dede AYHAN(Istanbul Univ., TMRF), Ayaka OTZTURK AMAHA(Istanbul Univ., TMRF), Yutaka OSADA(NRIFS), Michio KONDOH(Tohoku Univ.)

行動生態学において受動音響観測は強力な観測手法である。生物の発する音響と環境との間の関係を調べることで、生物の環境に対する応答を評価することが出来る。しかし、過去の多くの研究では音響と環境要因の間の相関や対応関係に着目するものが多く、生物と環境との間の相互作用(因果関係)を評価することはできていない。本研究では、生物由来の音響データを非線形力学理論に基づく時系列解析に適用することで、各生物とそれぞれの環境との間の因果関係を検定する。トルコ・イスタンブール海峡における、イルカ類がエコーロケーションに用いるクリック音と環境変数(気温、漁獲量)の438日間にわたる観測データを解析したところ、オキスズキの幼体の漁獲量からイルカの鳴き方への因果が検出された。この結果はイルカの行動が、オキスズキの生物量、もしくは漁獲量ないし人間の活動から影響を受けていることを示唆している。この結果は、音響観測データと非線形時系列解析を組み合わせることで、生物行動の集団レベルでの環境応答が検出できることを示している。長期にわたって高い時間解像度でデータが得られる音響観測は、本研究のような網羅的な解析による発見的なアプローチを可能とする。また、本研究のように操作実験なしに観測データのみから音響ないし生物の行動と環境の因果関係を探ることで、受動音響観測という非侵襲の手法を最大限に活用できることが期待される。


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