| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(口頭発表) C02-04 (Oral presentation)
生物は不均一の環境に適応するために、自身の形態を変化させる表現型可塑性と呼ぶ能力を獲得している。これを示す生物の1つに、エゾサンショウウオ幼生の大顎化が挙げられる。大顎化は主に同種幼生同士の共食いが起こる環境で発現する現象であり、他種の捕食や同種間生存競争において有利な形態である。本州に生息するクロサンショウウオ幼生においても、同様に大顎化を発現することが明らかになっている。しかし、その発現量に関して地域間で差があり、その要因については明らかになっていない。
そこで本研究では、クロサンショウウオ幼生の大顎化発現の要因について、①血縁関係による要因、②幼生の体サイズの違いによる要因を検証する。さらに、③共食いの起きやすい池環境で産卵された個体が共食いを強く行うのかについても検証を行う。これらの仮説をもとに、飼育実験および野外での生息環境調査を行うことで、クロサンショウウオ幼生大顎化発現に関する進化的背景について考察する。
実験と環境調査の結果、クロサンショウウオ幼生では①血縁関係による要因と②幼生の体サイズの違いによる要因によって大顎化を発現していることがわかった。これはクロサンショウウオ幼生が、他者の血縁関係と体サイズの両方を考慮していることが示唆される。また、③共食いの起きやすい池環境で産卵された個体が共食いを強く行うのかについては、オタマジャクシ、またはクロサンショウウオ幼生のどちらかの密度が高い場合に大顎化を発現する傾向が生息環境と実験結果の比較で確認された。