| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(口頭発表) C02-06  (Oral presentation)

変異、それとも形質置換?海浜性ゾウムシの交尾器に見る種間相互作用 【B】
Geographic variation or character displacement? Signature of inter-specific interaction in the genitalia of coastal weevils 【B】

*Kei MATSUBAYASHI(Kyushu University)

生物は、他種と様々な形で相互に影響を与えあっており、この種間相互作用は時に多様な形質の進化を強く促す原動力となる。複数種の分布が重複する地域において、非重複地域に比べて特定の形質が種間でより顕著に分化する形質置換は、種間相互作用が形質の多様化に影響する直接的証拠である。形質置換では資源利用に関わる形質や繁殖に関わる形質など、性質が異なる複数の形質が分化することがあり、特に生殖形質に関係したものを生殖的形質置換と呼ぶ。生殖的形質置換は繁殖干渉による適応度の低下を避けるために進化すると考えられているが、それが種内での多様性にどのような影響を与えるかについては未解明な部分が多い。日本の砂浜に広く分布する飛べない近縁な海浜性ゾウムシの2種は、本州西部から九州北部にかけての日本海側で同所的に共存しており、この地域で両種の雄交尾器の内袋骨片の形状に顕著な分化が示された。このような交尾器の形状の差異は、現在の同所的な地域の範囲を超えて広がっており、系統的なクラスターを跨いで観察されるケースも見つかった。2種のゾウムシの交尾器の差異が競争によらない種内地理系統間の多型に由来するのか、あるいは生殖的形質置換によるものかについて、現在の状況を紹介しつつ議論する。


日本生態学会