| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(口頭発表) C02-08 (Oral presentation)
森林生態系における地上バイオマス動態の把握は、地球上の炭素循環を理解するうえで重要である。近年、樹木の多様性が森林の生産量を向上させることが明らかになりつつあるが、多様性が森林の枯死量、そしてバイオマスの総増減量(net biomass change)にどのように影響するかはほとんどわかっていない。さらに、多様性と枯死量、バイオマスの総増減量の関係性が、気候条件や外的ストレスによってどう変化するかは不明である。
本研究では、カナダ全域の森林モニタリングデータ(>17,000調査区)を用いて、樹木の機能的多様性と森林の生産量、枯死量、バイオマスの総増減量(生産量 - 枯死量)との関係性を調べた。
機能的組成および林齢による影響を考慮した後、全体として、森林の生産量および枯死量は機能的多様性(ニッチ相補性)と共に増加した。機能的多様性が森林の生産量に与える影響程度は、枯死量への影響程度よりも大きかったため、バイオマスの総増減量も機能的多様性とともに増加した。機能的多様性と生産量の正の関係性は、湿潤な地域および平均気温の高い地域ほどより強かった。一方、機能的多様性と枯死量との正の関係性は乾燥した地域ほど大きく、また、気温勾配は多様性と枯死量の関係性に影響していなかった。その結果、ストレス勾配仮説に反して、機能的多様性と森林のバイオマス動態の関係性は樹木の成長にとって好適な環境において強まることがわかった。