| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(口頭発表) C03-08  (Oral presentation)

グリーンアノールの木の幹の太さによる止まり木選択
Tree trunk diameter preference of the green anole (Anolis carolinensis)

*三谷奈保, 坂上野花(日本大学)
*Naho MITANI, Yaka SAKAGAMI(Nihon Univ.)

 特定外来生物グリーンアノール(Anolis carolinensis)の捕食により、小笠原の在来昆虫相が著しい被害を受けている。主要な防除対策は、粘着トラップの木の幹への設置である。頻繁に利用する木の幹の特徴が明らかになれば、効率的なトラップの設置や捕獲効率の向上に寄与すると考えられる。父島のグリーンアノールが利用する止まり木の幹や枝の太さを計測した(n=423)。成体の半数が直径3.8cm未満の幹、幼体の半数が直径2.7cm未満の幹を利用していた。一方、調査地において、直径3.8cm未満の木の幹の割合は74%と高かった。また、野外における止まり木の観察結果には、幹の太さ以外の(日当たり、社会関係、捕食者など)未知の因子の影響が含まれる可能性がある。そこで、幹の太さに基づく選好性の有無を明らかにするため、オス成体13個体を対象に、垂直に設置した3種類の太さの木柱(直径1cm、5cm、15cm)を提示して観察した。各個体の位置を2分間隔で4時間記録した。観察は木柱の位置を変えて3回、実施した。木柱に登った回数と滞在時間の両方について、直径1cmの木柱が最も多く(p<0.05)、選好することが明らかになった。アノール属では、後肢長と止まり木の太さの間に相関があること、成育環境の止まり木の太さによって後肢長が変化することが知られている。直径1cmは指趾先が接するように幹を抱えることが可能な太さに相当する。野外調査および行動観察の結果から、小笠原のグリーンアノールを目的とする捕獲器の開発や効率的な配置においては、過半数の個体が約4cm未満の比較的細い幹や枝を利用していることを考慮に入れるとよいと考えられる。


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