| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(口頭発表) C03-09 (Oral presentation)
侵入種に近縁の在来種が存在する場合、両種の餌資源利用を明らかにすることは、侵入種が在来種に及ぼす影響を検討する上で重要である。
オオフタオビドロバチ(スズメバチ科:ドロバチ亜科)は日本の農地、二次林、都市部などで普通にみられる単独性カリバチである。営巣時、メスはノメイガ類やハマキガ類の幼虫を狩猟し、泥で仕切られた育室に複数の餌を貯食する。近年、このハチと同属のオデコフタオビドロバチが記載された。本種は2010年前後から、日本での分布を広げており、状況証拠から兵庫県では近年侵入した種であると考えられる。兵庫県において、両種の生息地域は重複しており、同じ餌資源を利用していた場合、餌をめぐる競争的相互作用が生じうる。しかし、オデコフタオビドロバチは餌利用を含め生態がほとんど明らかになっていない。本研究では、竹筒トラップを用いた野外調査を通じて両ドロバチ種の餌利用を明らかにし、餌資源を介した種間相互作用について検討した。
調査は2019年6月~10月に兵庫県高砂市の農地で行った。48か所に計950本の竹筒を設置したところ、オオフタオビドロバチ70本(207育室)、オデコフタオビドロバチ50本(160育室)の営巣が確認された。オオフタオビドロバチは6月から10月まで、オデコフタオビドロバチは7月から8月まで営巣しており、両種の活動時期は一部重複していた。育室に貯食されたガ幼虫を外部形態から分類すると、オオフタオビドロバチは18種、オデコフタオビドロバチは1種のみを利用していた。両種の餌種は全く重複していなかった。以上の結果から、オオフタオビドロバチは餌利用に関してジェネラリスト、オデコフタオビドロバチはスペシャリストであることが示唆され、侵入種オデコフタオビドロバチが餌資源を通じて在来種オオフタオビドロバチに影響を与える可能性は低いと考えられた。