| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(口頭発表) C03-12 (Oral presentation)
外来生物の特徴を理解することは、すでに侵入している種が農林水産業や在来の生態系に与える影響を評価したり、侵入する可能性が高い種を予測したりするのに有益である。それゆえ、侵入生態学ではどのような形質が侵入成功や侵略性に関与するかについての知見が収集されてきた。この際、外来生物の原産地(自然分布域)の情報が外来生物の特徴的な形質を推定する上で重要である可能性がある。なぜなら、同じ地域で生育した生物はその土地の生物地理的な要因に適応した結果、ある程度共通した形質を持つと考えられるからである。しかしながら、侵入地における外来生物の形質と原産地の関係はこれまで検証されてこなかった。そこで、本研究では日本の外来草本植物群集をモデルとし、侵入成功や在来種に影響を与える開花フェノロジーという形質に着目して原産地との関係を検証した。
まず、国内の草本植物の原産地と開花フェノロジーの情報を得るため、以下の三つのデータを収集した。(1)国内の帰化植物を網羅した既存の図鑑の約930種のデータ、(2)東京都西東京市の東大生態調和農学機構で市民ボランティアが22年間にわたって収集した在来種を含む約400種のデータ、(3)埼玉県と東京都の8地点の1年間のベルトトランセクト法による開花調査のデータ、である。次に、外来草本植物の原産地と開花フェノロジーの関係を検証するため統計解析したところ、いずれのデータセットでも外来植物の原産地と開花フェノロジーに強い関係が見られた。例えば、ヨーロッパ原産の外来草本植物は春咲きが多く、北アメリカ原産の外来草本植物は秋咲きの種が多かった。これらの結果は、外来生物の形質や在来種への影響を評価あるいは予測する際に、原産地を考慮することの重要性を示唆している。本発表では解析結果の詳細に加え、在来の草本植物群集との関係についても言及する。