一般講演(口頭発表) D01-01 (Oral presentation)
ゲノム編集から明らかにする性的二型原因遺伝子の適応度への影響
Fitness effects of a gene for sexual dimorphism revealed by genome editing in a Sulawesian fish
*安齋賢(東北大学, 国立遺伝学研究所, 基礎生物学研究所), 持田浩治(慶應義塾大学, 琉球大学), 藤本真悟(琉球大学), Daniel F. MOKODONGAN(Univ. Ryukyus, Halu Oleo Univ.), Bayu Kreshna Adhitya SUMARTO(Univ. Ryukyus), Kawilarang W. A. MASENGI(Sam Ratulangi Univ.), Renny K. HADIATY(LIPI), 永野惇(龍谷大学), 豊田敦(国立遺伝学研究所), 成瀬清(基礎生物学研究所), 山平寿智(琉球大学), 北野潤(国立遺伝学研究所)
*Satoshi ANSAI(Tohoku Univ., NIG, NIBB), Koji MOCHIDA(Keio Univ., Univ. Ryukyus), Shingo FUJIMOTO(Univ. Ryukyus), Daniel F. MOKODONGAN(Univ. Ryukyus, Halu Oleo Univ.), Bayu Kreshna Adhitya SUMARTO(Univ. Ryukyus), Kawilarang W. A. MASENGI(Sam Ratulangi Univ.), Renny K. HADIATY(LIPI), Atsushi J. NAGANO(Ryukoku Univ.), Atsushi TOYODA(NIG), Kiyoshi NARUSE(NIBB), Kazunori YAMAHIRA(Univ. Ryukyus), Jun KITANO(NIG)
性選択は、繁殖形質における急速な表現型の多様化を促進する。しかし、性選択形質の多様化の原因となる遺伝子はほとんど同定されていない。原因遺伝子の同定により、どんな突然変異が性特異的な形質進化を引き起こすのか、またその遺伝的変化により適応度のうちのどの要素が影響を受けるのか、を理解することが可能となる。インドネシア・スラウェシ島に固有のメダカ科魚類は、性特異的な繁殖形質の多様化が顕著である。本研究では、まずスラウェシ固有メダカの参照ゲノム配列を作成し、そのうちの1種ウォウォールメダカ(Oryzias woworae)のオスに特有の形質である胸鰭における赤色の遺伝的基盤を明らかにした。続いて、連鎖解析、トランスクリプトーム解析、ゲノム編集を組み合わせて、その原因遺伝子としてcsf1を同定した。csf1をノックアウトしたオスでは、赤色素細胞が減少し、メスとの交尾に必要な時間が増加したことから、csf1を介した赤色の発現がオスの繁殖成功に寄与することが示唆された。また、オスの装飾的な形質は捕食者を引き付けるという一般的な仮説に反して、非赤色のcsf1ノックアウトオスは対照の赤色オスよりも捕食魚を引き付けることが明らかとなった。これらの結果から、ゲノム解析とゲノム編集技術を統合した解析により、性選択形質の原因遺伝子の同定や、性選択にまつわる様々な理論の実験的な検証を可能になることが示された。