| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(口頭発表) D01-09 (Oral presentation)
資源の限られた島嶼環境において、利用可能な資源量に依存することで、体サイズや行動特性等が変化することを「Island rule」と呼ぶが (Foster 1964)、この現象とその背景を明らかにすることは、進化生物学において重要な課題の一つである。シマヘビは、カエル類などを中心に幅広い食性を持つことが知られているが、新潟県佐渡島では、外海府地域を中心にシマヘビによる ハゼ科魚類捕食が確認されている(長谷川ほか 未発表)。このことから魚食個体群では、頭部形態や行動に変化が現れていることが予測される。そこで本研究では、地域間・食性間における頭部形態の比較と、魚食行動の比較を行うことで上記を検証した。
シマヘビの頭部形態を、佐渡島内3地域と本州(新潟県)1地域の4地域、計61個体で比較し、強制吐き戻し法により餌生物を確認した。頭部形態に有意な地域差はみられず、また魚類を捕食していた個体と他の餌を食べていた個体との間でも有意な差は見られなかった。
魚食の行動は2つの方法で観察した。飼育実験1:河川環境を再現した飼育設備に餌としてハゼ類をいれ、魚食個体、その他食個体、本州個体を1個体ずつ入れ捕食行動を記録した。ハゼ類の捕食は、すでに魚食個体1個体 でのみ確認されたが、行動特性に差は見られなかった。飼育実験2:飼育実験1に用いた個体を小さな水槽に入れ、餌としてさらに小さな器に入れたハゼを与え、計15個体 の捕食行動を記録した。その結果、水中のハゼを認識し捕食したのは佐渡島の3個体、水から飛び出したハゼについては佐渡島の3個体と本州1個体であった。佐渡島におけるシマヘビの魚食行動は、頭部形態を分化させるにはいたっていないが、水中のハゼ類を探索、捕食する行動には個体間の違いが生じている可能性がある。