| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(口頭発表) D01-12 (Oral presentation)
本研究では新たな種間系統比較法を提案し、この手法で方向性淘汰の強さを不偏に推定できることを示す。種間系統比較法(phylogenetic comparative method; PCM)は、形質のマクロ進化を分析する統計的手法の総称で1) 祖先種の状態や進化速度などのパラメータを推定する 2) メタ解析など複数種を含むデータの分析で、進化史の共有に起因する相関を補正する等の目的で急速に応用が増加している。
PCMには大きく分けガウス過程によるアプローチとシミュレーションによるアプローチの2つがある。ガウス過程によるアプローチは計算が容易なことから長くPCMで主流であったが、モデルの柔軟性が不十分で実データへの適合や予測精度に問題があることが指摘されている。また、モデルの構造にミクロ進化など他の生物学領域で知られた知見との乖離があり推定結果の解釈が困難であることも知られてきた。一方Kutsukake and Innan(2013; Evolution)等で提案されたシミュレーションによるアプローチ(ABC-PCM法)では、集団遺伝学など関連領域の知見を取り入れた柔軟なモデルが可能となるが1) 統計的信頼性が評価しにくい 2) 高い計算コストを伴う 3) 専用ソフトウェアが必要で応用しづらい、等の問題があった。
そこで本研究では、シミュレーションに基づく方向性淘汰モデルをガウス過程モデルとして再定式化した“枝特異的方向性淘汰(branch-specific directional selection; BSDS)モデル”を提案し、実データへの適用例と数値実験の結果を紹介する。提案手法はRとStanで実行可能で、別サイトにてソースコードを公開予定である。