| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(口頭発表) D02-04  (Oral presentation)

植物の個体間資源競争と獲得資源による連合防衛のゲーム理論モデルによる研究
The game theory model of resource competition between individuals and associational resistance by acquired resources in plants

*瀬川有太郎(京都大学)
*Yutaro SEGAWA(Kyoto Univ.)

 植物には被食防衛レベルに多型がみられる場合がある。こうした防衛レベルの多型は共同防衛における協力ゲームの文脈で説明できる。しかし、多型をもたらす協力ゲームでは、適応度は防衛によって実現される利益と防衛のコストの差で定義される。一方、植物の資源分配を考えると、成功度はコストを払って実現した繁殖と、それに対する防衛の効果の積で表すことが現実的であろう。ただし、我々の予備的な解析では、そうした定式の下では多型は生じないことがわかった。そこで、このような適応度の定義の下で防衛の多型がもたらされるメカニズムを考えるために、(i) 地下部への投資による資源獲得過程と、(ii) 地上部での共同防衛の文脈における繁殖と防衛への資源配分という、2段階の進化ゲームを含むモデルを考える。
 まず、地下部のゲームでは、集団中の任意の2個体が資源獲得のために地下部に投資する。パッチ内の資源は各々の個体の投資量に応じて分配されるが、同時に協力的あるいは競争的な相互作用の結果として、2個体の投資の総量に応じてパッチ内で獲得可能な資源の総量自体も増減すると仮定する。この分配と投資の差として、各個体が利用可能な資源量が決まる。次に、地上部のゲームにおいて、その資源が地上部において繁殖と防衛のそれぞれに投資される。防衛の効率はパッチ内の2個体による防衛への投資の総量の増加関数となり、それが繁殖量の残存を高める。
 このシステムでは、地下部のゲームにおいて地下部への投資量の多型が生じることがあり、その際に地上部の防衛への投資量にも分岐が引き起こされる場合があることが明らかになった。このとき、資源獲得への投資量を高くする戦略を持つ個体ほど共同防衛への投資量も高くなる戦略を持つようになることが示された。


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