| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(口頭発表) D02-05  (Oral presentation)

人工生態系を12種微生物でつくったら進化やキーストーン種による確率的現象が見えた
Stochastic phenomena due to evolution or keystone species in a synthetic ecosystem of 12 species microorganisms

*細田一史(大阪大), 瀬尾茂人(大阪大), 村上なおみ(大阪大), 長田穣(水産機構), 松田秀雄(大阪大), 近藤倫生(東北大)
*Kazufumi HOSODA(Osaka Univ), Shigeto SENO(Osaka Univ), Naomi MURAKAMI(Osaka Univ), Yutaka OSADA(FRA), Hideo MATSUDA(Osaka Univ), Michio KONDOH(Tohoku Univ)

生態系はどのような仕組みにより多様で秩序ある状態を形成し、保っているのだろうか?もし仕組みが無ければ、伝言ゲームのように秩序は失われていくはずである。競争排除、中立性、生物の適応など、その仕組みに関わる様々な概念が知られるが、どれだけの知識があれば、私達は秩序ある生態系を新しく作ることができるだろうか?できる限り「イチから」つくっていく挑戦は、私達の知識を知るためにも、新しい知識を得るためにも、重要な試みだろう。この目的のため、私達はハイスループットな実験を可能とする、12種の微生物による人工生態系を構築した。全ての生物が凍結保存可能であるため、世界中で再現可能であり、また進化における前後の変化も解析可能である。特に、予め強い相互作用の知られていないモデル生物を集めているため、共進化などで相互作用が構築されていく様子や、それが秩序ある生態系にどのようにかかわるのかを観察していくことができる。種数が増えると体系的に試すべき実験条件の数が指数的に増加するが、顕微鏡画像の機械学習などを用いることで、実際に一人の実験者が無理なく数千から万の生態系を同時進行することができる。この人工生態系はシンプルではあるが、すでに進化やキーストーン種による確率的現象が観察されており、生態系らしい複雑性を持っていることが示唆される。また、様々な実験データと一貫性のある現実的な数理モデルを構築できており、これによって実験よりもさらに多くの条件を試すことができる。今後この人工生態系はさらに改善を続け、世界中で無数に実験される「モデル生態系」として、生態系やその中の生物の仕組みの解明、およびそれらの制御のための知識と技術の獲得に貢献するだろう。


日本生態学会