| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(口頭発表) D02-07  (Oral presentation)

生息地改変による群集の形成
Community Formation through Habitat Modification

*岩下源, 近藤倫生(東北大学生命)
*Gen IWASHITA, Michio KONDOH(Tohoku Univ.)

生物は環境から影響を受けるだけではなく環境に影響を与えることはよく知られている。なかでも、生息地を創出し改変する生物は生態系エンジニアと呼ばれている。生態系エンジニアは生息地の改変を通してエネルギーの流れを変え他の生物の生存に影響を及ぼす。生態系エンジニアは他の生物に影響を与えることはよく知られているが、生態系エンジニアが群集全体の多様性に対してどのような影響を与えるかはよくわかっていない。この理由の一つとして従来の生態系エンジニアを取り入れた個体群動態の数理モデルは多種系への拡張が難しく、生態系エンジニアが群集の多様性に与える影響を調べるのが難しいことがある。そこで、本発表では多種系の生態系エンジニアに拡張可能な数理モデルを作った。具体的には環境を一次元の連続な量として定義し、生物はその環境の中の一点を利用するとした。生物と環境の関係は次の四つの条件を満たすとした。:(1)生物は環境を変えることで自身の生息地を増やす(2)生物の増殖率は生物が利用する生息地の量に依存する(3)生物が自身の環境を増やすと他の環境の量が減少する(4)生物の生息地はほっとくと劣化する。このモデルは生態系エンジニアのなかでも自身が他の生物の生息地になる自律的なエンジニアではなく巣などの構造を作ることで環境を別の状態に移す生態系エンジニアを表現している。このモデルを用いて生態系エンジニアが環境に影響を与える範囲と環境に与える影響の強さを様々に変えて生態系エンジニアが群集全体の多様性に与える影響をシミュレーションした。その結果どちらも中程度の場合に多様性が最大になることが示された。この結果から生物の生態系エンジニアリングがあると種多様性は増えるが強く環境を変化させすぎると多様性が低くなることが示唆された。


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