| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(口頭発表) E01-01  (Oral presentation)

東京大都市圏における生物多様性保全には周辺緑地面積よりも緑地の歴史が重要
Habitat history is more important than surrouding habitat for conserving biodiversity in Tokyo metoropolitan area

*岩知道優樹(横浜国立大学), 内田圭(東京大学), 林晋也(福岡大学), 孫熙(横浜国立大学), 桐下正隆(横浜国立大学), 堀内颯夏(横浜国立大学), 森章(横浜国立大学), 佐々木雄大(横浜国立大学)
*Yuki IWACHIDO(Yokohama National Univ.), Kei UCHIDA(The Univ. Tokyo), Sinya HAYASHI(Fukuoka Univ.), Xi SUN(Yokohama National Univ.), Masataka KIRISHITA(Yokohama National Univ.), Soki HORIUCHI(Yokohama National Univ.), Akira S MORI(Yokohama National Univ.), Takehiro SASAKI(Yokohama National Univ.)

地球上においてかつてない勢いで拡大する都市は、生物多様性を脅かす最大の原因の一つとされている。しかし都市生態系には、特有の生物多様性を有するだけでなく、人々に多様な恩恵を与えており、都市における生物多様性の保全は、生物だけでなく人間の生活を支えるという意味からも重要である。

これまで都市生態系保全の研究は、残存緑地における生物多様性の保全を目標に、コリドーやstepping stoneなどを効果的に作ることで、緑地間の連続性を増加させることに焦点が当てられてきた。緑地間の連続性の増加は、生物の移動や分散を促進させる可能性がある一方、多くの外来種が生息する都市においては、外来種の分布を拡大させる恐れがあるため、未だに生物多様性保全の効果については議論が行われている。また、造成された緑地の生息地環境や生物多様性は年々と変化しており、造成された古い緑地は残存緑地と同等の生物多様性を保持している報告もあるため、生物多様性を保全するには緑地の歴史性を考慮する必要である。都市の生物多様性保全にかける労力やコストには制限があるため、効果的な保全策を明らかにする必要があるが、周辺緑地面積や緑地の歴史性のどちらが生物多様性保全に効果があるのかについてはほとんど明らかにされていない。

本研究では、緑地の歴史(造成からの年数)や周辺緑地面積が都市の生物多様性に与える影響を明らかにするために、世界最大の都市人口を誇る東京大都市圏を対象に、都市化率の異なる3地域(都市中心部・郊外部・農村部)の分断された生息地(全53地点)において植物の調査を実施した。造成からの年数を過去の航空写真を用いて算出し、周辺緑地面積は高解像度土地利用土地被覆図(JAXA)を用いて算出した。これらから、植物群集が造成からの年数や周辺緑地面積によりどのように変化するのかを明らかにした上で、緑地の歴史性が生物多様性保全に及ぼす影響について議論を行う。


日本生態学会