| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(口頭発表) E01-02 (Oral presentation)
半自然草原で特有にみられる植物群集は、人為管理の手法や頻度、継続期間のほか、草原の減少・分断化による景観構造の変化からも影響を受けることが知られている。しかし、人為管理の変化と景観構造の変化は同所的に生じることが多いにもかかわらず、両者が群集構造に及ぼす影響を同時に評価した研究はこれまでほとんど存在しなかった。このため、半自然草原における人為管理の影響や景観構造の影響は、それぞれ過大あるいは過小評価されてきた可能性がある。そこで、静岡県賀茂郡東伊豆町の半自然草原を対象として、現在の人為管理と景観構造の歴史的変化の両者が草原性植物に与える影響を検証した。調査は、ラインセンサス法によって維管束植物の在不在データを収集するとともに、火入れや草刈りなどの人為管理の現地確認、1940年代から2010年代までの空中写真による土地利用形態の判別を実施した。これら2要因と植物群集の関係をCCAにより評価した結果、火入れ管理の有無と約70年前(1947年)の景観構造が、群集組成をもっともよく説明していることが判明した。さらにCCAの結果から、火入れ管理と過去の景観構造が異なる3つのグループに群集を分類することができた。これらの結果から、草原を形成する人為管理と過去の景観構造は、その組み合わせによって成立する植物群集が異なりうることが示唆された。この手法により現場の保全計画とのミスマッチを検証することで、草原生態系をより確実に保全できる可能性がある。