| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(口頭発表) E01-10  (Oral presentation)

滋賀県愛知川扇状地帯のコウノトリ生息地に対する水利用可能性
Water availability to Oriental White Storks' habitat in Echi-River alluvial fan

*山田由美(慶應義塾大学, 総合地球環境学研究所), 瀧健太郎(滋賀県立大学, 総合地球環境学研究所), 吉田丈人(総合地球環境学研究所, 東京大学), 出口智広(兵庫県立大学), 一ノ瀬友博(慶應義塾大学, 総合地球環境学研究所)
*Yumi YAMADA(Keio University, RIHN), Kentaro TAKI(University of Shiga Prefecture, RIHN), Takehito YOSHIDA(RIHN, The University of Tokyo), Tomohiro DEGUCHI(University of Hyogo), Tomohiro ICHINOSE(Keio University, RIHN)

水循環の過程で地下水が地表に現れる「湧水」やそれに接続する「水路」などの開放水域は常時冠水域として多様な動植物の生息・生育の場を提供する。本研究では、氾濫原依存種にとって、特に水田の非湛水期や積雪時にも湧水箇所が通年維持される開放水域であることは個体の利用に重要な役割を果たすと考え、シンボル種として選定したコウノトリの既知の滞在点と、主に湧水の潜在性のある空間との関係を整理する。
本研究は実際に非灌漑期にコウノトリ滞在が観測された滋賀県湖東部の愛知川下流域を対象地とする。
具体的にはGPS追跡されたコウノトリの位置情報と以下5つの地形要因との関係を整理する。以下を選定した理由は、いずれも高い湧水潜在性として、扇端部であること、地下水位が高い状態を示せる地形情報である故である。
①集水のしやすさ指標(地形的湿潤指数TWIをDEMから作成)、②川と陸域の高低差(本川、支川、水路からの比高をDEMから計算)、③傾斜転換点位置(DEMの傾斜角度から特定)、④土壌タイプ(全国デジタル土壌図から特定) ⑤旧河道(土地条件図、旧版地形図から特定)
湧水の潜在性に関しては、実際の井筋や井戸の史実の記録と照合する。なおDEMデータは50cm解像度という高精度地形情報を利用することで、微細な勾配や小河川や水路などの検出を目指すことが本研究の特徴の一つである。
コウノトリは湧水帯だけに依存して個体群維持をする訳ではなく、もちろん当該地は利用域の一部に過ぎない。しかし本研究により湧水帯の選好性が確認できれば、今後保全に対する要件整理の中で、時間的・空間的に位置づけられる要素の一つとして提示できるものとなり得る。


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