| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(口頭発表) E01-11  (Oral presentation)

北海道大黒島で繁殖するウトウの利用海域選択
At-sea habitat selection of rhinoceros auklets in Daikoku Island, Hokkaido

*佐藤雄大(徳島大学), 藪原佑樹(千葉県庁, 徳島大学), 山内彬弘(徳島大学), 大門純平(北海道大学), 綿貫豊(北海道大学), 河口洋一(徳島大学)
*Takahiro SATO(Tokushima Univ.), Yuki YABUHARA(Chiba Pref., Tokushima Univ.), Akihiro YAMAUCHI(Tokushima Univ.), Jumpei OKADO(Hokkaido Univ.), Yutaka WATANUKI(Hokkaido Univ.), Yoichi KAWAGUCHI(Tokushima Univ.)

 近年,洋上風力発電施設の増加に伴い,海域を利用する海鳥の衝突事故や,生息地放棄といった負の影響が欧州を中心に顕在化しつつある.洋上では風車稼働後の影響評価が困難であることから,海鳥にとって重要な海域を明らかにし,事前に風車建設を回避すべき場所を明示することが予防措置として重要となる.日本では北海道を中心に発電に適した海域が広く分布しており,既に複数の洋上開発計画が進みつつある.北海道は東部沿岸域に海鳥繁殖地が集中し,その周辺は子育てに不可欠な採餌環境であると予測されるが,どのような場所が重要なのかは明らかとなっていない.そこで本研究では,北海道東部の大黒島で繁殖するウトウを対象に,GPSロガーを用いて行動を追跡し,育雛期における行動圏を明らかにするとともに,統計モデルにより本種の利用場所選択に影響する環境要因を抽出することを目的とした.その上で,作成された統計モデルにより,北海道東部における本種の潜在的な利用海域を推定した.行動追跡の結果,ウトウは営巣地から40km圏内,水深200m以浅の陸棚上を集中的に利用していた.また,モデル解析により,ウトウの利用度は営巣地に近いほど高くなることも明らかとなった.育雛期間中,大黒島周辺には主要餌であるサケ稚魚が広く分布することが知られており,親鳥は長距離を移動することなく営巣地の周辺で餌を確保できると考えられた.モデル解析の結果を本種の最大移動範囲に投影し,潜在的な利用海域を推定したところ,営巣地から20km圏内において特に高い予測値を示した.このことから,少なくとも北海道東部では,営巣地周辺はウトウにとって重要な採餌ハビタットである可能性が示唆される.


日本生態学会