| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(口頭発表) E02-06  (Oral presentation)

大学キャンパス里山林における林分構造の変遷 【B】
Community structure change of Satoyama forests in an university campus 【B】

*関川清広, 高倉亮祐, 岩上茜, 池之詩織, 友常満利(玉川大学)
*Seikoh SEKIKAWA, Ryosuke TAKAKURA, Akane IWAGAMI, Shiori IKENO, Mitsutoshi TOMOTSUNE(Tamagawa University)

 教育施設の更新や拡充を除くと,大学キャンパス里山は保存されていることが多く,少スケールながら同一地域でのモニタリング調査が可能な生態系である.玉川大学キャンパスの里山は,周辺部の宅地化が進んだことにより孤立的であるため,都市域の緑地として希少性が高い.同キャンパスには里山林として,コナラ,クヌギなどにミズキやシラカシが混生する広葉樹二次林,スギやヒノキが混生する針広混交二次林,針葉樹植林,竹林(モウソウチク林,マダケ林)などが含まれる.これらのうち二次林は,大学創設期ころは薪炭林としての需要があったが,需要低下に伴い次第に放置されるようになった.これらの林分について,卒業研究による調査が行われてきたが,教育目的の卒業研究データは,データの質的維持と保存性に留意を要する.里山林の維持管理と保全に活用できるよう,1984年と2010年前後の卒業研究データを比較・検証し,データの利用性を検討した.亜高木層以上(地上高4 m)の毎木調査から,1984年から2010年頃(2009,2015,および2016年)の約30年間で,密度は数 % 減少,DBHは1.5〜2倍に増加,樹高は数 % の増加,バイオマスは約3倍と大幅に増加した.また,以前はアカマツが学内全域に多く見られ(玉川学園写真アーカイブによる),1984年にも少ないながら記録されたが,マツ枯れの影響もあり,2010年頃にはほとんど見られなくなった.2015年ころから再開された学生実習(授業)による里山林の維持管理(関川ら2020,ESJ67),また近年(2018年と2019年)の強い台風害による幹折れや風倒,およびナラ枯れの発生などによる上層木や下層植生への影響について,上記の留意点も踏まえて研究を進める必要がある.


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