| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(口頭発表) E02-08  (Oral presentation)

イノシシによる水稲被害が発生しにくい景観構造の解明
Unravelling landscape structure that is less likely to occur wild boar damage to paddy rice

*松村広貴(千葉県農林総合研究セ)
*Hiroki MATSUMURA(CAFRC)

 千葉県では野生イノシシによる水稲への被害が深刻である。水田圃場への防護柵の設置、維持管理をせずに雑草が繁茂している農地(荒廃地)の刈り払い、捕獲による被害防止対策を行っているが、これらの対策をどこで、どれだけ実施すれば被害が軽減されるのかは明らかでない。より効果的な対策を検討するためには、イノシシ被害の発生要因を解明する必要がある。そのため、水田圃場周辺の景観構造及び対策の実施状況が、イノシシによる水稲被害発生に及ぼす影響を解析した。
 2019年度に千葉県房総半島南部の東西4km、南北3.6kmの範囲を調査地とし、5月に森林、道路、建築物、河川、水田の位置を現地で確認した。7月上旬~8月上旬に荒廃地の位置と防護柵設置場所を現地で確認した。収穫前の8月中旬に水稲が作付けされた水田の被害の有無を現地で調査するとともに、水田畦畔雑草の高さを10cm刻みで計測した。イノシシ捕獲地点は捕獲者が自治体に提出する帳票で確認した。圃場周辺の環境データとして、道路までの距離、建築物までの距離、河川までの距離、森林占有率、荒廃地占有率、標高を求めた。
 調査水田796圃場のうち、177圃場で被害が発生していた。水稲被害の有無を目的変数、環境データと畦畔雑草の高さ、周辺の捕獲頭数、防護柵の有無を説明変数としたロジスティック回帰モデルに、空間的ランダム効果を導入したIntrinsic CARモデルを構築し、各種要因が圃場の被害発生に及ぼす影響を解析した。その結果、建築物までの距離、森林占有率、荒廃地占有率、畦畔雑草の高さは値が小さくなるほど、また、防護柵を設置していると、被害が発生しにくい傾向が認められた。なお、本調査では周辺の捕獲頭数が、被害に影響する重要な要因であるとは判断できなかった。


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