| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(口頭発表) E03-04 (Oral presentation)
持続可能な社会システムを形成し、深刻化する環境破壊の問題に取り組むため、アグロエコロジーが国際社会において重要な議題となっている。経済発展を追求した工業型農業は森林を伐採し、農薬と遺伝子組換え作物を普及させ、伝統的な生態学的知識に基づく農業生態系を破壊してきた。アグロエコロジーは農業の工業化によって衰退する伝統農法及び先住民コミュニティにおける農業生態系を研究する学問として発展し、生態学に基づく科学、実践及び社会運動として解釈される(Wezel et al. 2009, Altieri and Rosset 2017)。環境負荷の高い工業型農業のオルタナティブとしてアグロエコロジーは持続可能なフードシステムとしても論じられ、生産者及び消費者のライフスタイルを問い、教育的側面を重んじる(Gliessman 2015)。多様な解釈及び機能を持つアグロエコロジー思想を論じる上で全体論且つ学際的な視野が不可欠であるものの、その複雑さ故に曖昧な理解と具体的とは言い難い政策議論を導くと考える。アグロエコロジーを普及させるためには、その概念の実践的側面に焦点をあてて議論することが重要であり、パーマカルチャーの思想が具体的な実践方法を理解する上で有益である。持続可能な社会システムの構築を目指し、永続する文化を追求するパーマカルチャーはアグロエコロジーと同様、農業の工業化に対抗する思想であり、科学と伝統知を融合させ、持続可能な土地管理の方法を模索する。アグロエコロジー運動はラテンアメリカから世界に広がり、先住民コミュニティをサポートするNGOがアグロエコロジーの普及活動に多大な影響を与えた。そして、オーストラリアから世界に発信されたパーマカルチャーの実践は、ラテンアメリカにおけるアグロエコロジー普及活動としても受け入れられている。本研究はパーマカルチャーのレンズを通してアグロエコロジーを考察し、農業生態系保全を論じる。