| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(口頭発表) E03-05 (Oral presentation)
陸域の生態系が光合成によって年間に吸収する二酸化炭素量は、毎年の気候変化や温暖化、乾燥化などの長期的な環境変動の影響を受けて変動し、炭素収支の年変動に大きな影響を与える。光合成活性の指標として近年注目されるクロロフィル蛍光は、植物学の分野では光合成活性の指標として用いられてきたが、衛星や航空機観測などのリモートセンシング観測においても太陽光によって誘起されるクロロフィル蛍光(SIF)の観測データが利用できるようになってきた。しかし、森林などの群落から衛星観測方向に射出されるSIFは、葉面から射出されたのちに隣接する葉群で多重反射された成分を含むため1枚の葉面からの成分とは異なり多数の葉群からなる森林群落の構造の影響を受ける。このため、実際に森林群落から射出され衛星で観測されるSIFと日向や日陰を含む個葉のSIFの関係を理論的に説明するためのモデル(放射伝達モデル)が必要不可欠である。また、複雑な群落構造を持つ森林などにおいては樹冠の3次元的な構造がSIF放出量や観測量に大きく影響を与えるため3次元放射伝達モデルによる解析が適している。
そこで本研究では、SIFの放射伝達モデルを可視・近赤外の太陽光反射の3次元放射伝達モデルとして開発されたFLiESをベースに開発し、SIF観測量の再現性を感度解析で明らかにすると共に、岐阜県高山市の観測サイトのデータとの比較を通じてモデルの検証を実施する。感度解析では、SIF観測量に対する森林構造や太陽と観測点の位置関係、葉面積指数LAI(Leaf Area Index)の与える影響を詳細に調べた。さらに、地上タワー観測によって取得された環境データを用いたシミュレーション結果と地上観測、衛星観測によって取得されたSIF放出量のデータを比較することでモデルの有効性を確かめるとともに今後の改善点について考察を与える。