| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(口頭発表) E03-07 (Oral presentation)
植物はその根周辺の微生物群集に影響を与え、養分条件を変化させる。本研究が対象とするマングローブ植物は熱帯・亜熱帯の潮間帯に分布する。その土壌は嫌気的になりやすく、一般に硝化が起こりにくい。しかし、マングローブ植物の根の近傍ではNO3--Nの濃度が他の場所と比べて高いことを示した研究もある。このことからマングローブ植物の根から酸素や有機物などが漏出することで、根の近傍で硝化の起こりやすい環境が形成されている可能性がある。本研究はマングローブ植物の影響により生じる土壌の無機態窒素濃度の時空間的な変動を微細に調べることを目的として、オヒルギを対象として砂耕実験を行った。
根の分布範囲を非破壊的に把握するため、幅の狭い根箱を用い、オートクレーブ滅菌した川砂を培土として、各根箱にオヒルギ 1個体を植栽した。また対照区として植物を植栽しない根箱を作成した。植栽開始後6週間は重力水を排水した状態で栽培した後、土壌中を低酸素状態にするため水位を地表面と同じ高さに変更した。2週間毎に窒素源をNH4+-Nのみとした養分溶液を施肥し、次回の施肥直前に各根箱において植物の植栽位置からの距離が異なる地点で土壌溶液を採取し、無機態窒素濃度とpHを測定した。また定期的に一部の根箱を解体して土壌を採取し、土壌中の無機態窒素現存量を調べた。
植物を植栽した根箱ではNO3--Nが検出され、対照区よりもその濃度は高かった。植物が土壌窒素養分条件を変化させたと考えられる。植栽位置付近では他と比べ、無機態窒素濃度が低かった。植栽位置付近で植物や微生物による無機態窒素の消費が大きかったと考えられる。日数が経過するにつれ、植栽位置付近以外の地点でのNO3--N濃度が植栽位置付近の濃度と同程度に低下し、加えて根の分布範囲も広がっていた。この結果から根の伸長と共にNO3--Nの消費が高い範囲が広がったと考えられる。