| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(口頭発表) E03-10 (Oral presentation)
2011年3月に福島第一原子力発電所 (FDNPP)で発生した事故により,福島県を中心とした広範囲の地域に多量の放射性物質が降下した.FDNPP由来の放射性核種の中で137Csは比較的長い半減期(30.2 年)を持っているため,生物学的に利用可能な形態の137Csは生態系内で食物網を介して長期間循環する可能性がある.また,放射性物質で汚染された地域の約70%は森林地域で占められているが,森林地域は林縁を除いて今までに除染されたことがない.そのため,河川に沿った生態系を通じて森林地域から生活圏に137Csが移行するダイナミクスについても継続的に監視していくことが必要であるといえる.本研究では河川流域の複数地点で採取した生物サンプルや土壌・河床堆積物サンプルの137Cs濃度を分析し,食物網を介した137Csの循環・移行について定量的に評価することを目的とした.
調査は福島県内の4つの河川の流域で行なった.FDNPPの北東約55 kmに位置する伊達市サイトでは上小国川流域を,北西約10 kmに位置する浪江町サイトでは請戸川流域と高瀬川流域を,南西約5 kmに位置する大熊町サイトでは熊川流域を調査対象とした.各河川流域において上流の森林地域から比較的下流の生活圏に近い地域にかけて3地点を選択し,節足動物をはじめとする生息生物,土壌,河床堆積物を各地点で採取した.生物サンプルの137Cs濃度はゲルマニウム半導体検出器によって分析した.土壌・河床堆積物サンプルの137Cs濃度はNaI(Tl) シンチレーション検出器によって分析した.各地点で得られた各サンプルの137Cs濃度を比較し137Csの空間的分布やその形成要因を検討した.