| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-010 (Poster presentation)
自動動画撮影カメラを用いた陸上哺乳類の絶対的個体密度推定方法であるRandom Encounter and Staying Time (REST)モデルは、撮影範囲内に設置した有効撮影範囲に動物が滞在した時間の期待値と有効撮影範囲に侵入した回数から個体密度を推定するモデルである (Nakashima et al. 2018)。有効撮影範囲はセンサーが必ず反応し確実な撮影がなされる範囲内に設置され、その形状はNakashima et al. (2018) では正三角形を使用している。有効撮影範囲の設定は確実な撮影を担保する一方、撮影データのうち動物が有効撮影範囲に侵入しないデータは利用することができない。有効撮影範囲の形状は侵入した動物の確実な撮影という条件を満たせば正三角形以外の図形を考えることができる。つまり、よりセンサーの高感度領域に沿った形状に有効撮影範囲を設定することで、推定に利用できるデータを増やすことができる。しかし、有効撮影範囲の形状が変われば滞在時間の確率分布の形状や侵入回数が変化すると考えられるため、密度推定への影響を評価する必要がある。本研究では異なる有効撮影範囲の形状が密度推定に与えるバイアスをシミュレーション及び野外実験の両面から評価した。その結果、RESTモデルによる個体密度推定値は有効撮影範囲形の影響を受けないが、滞在時間の期待値と撮影回数は有効撮影範囲形によって変化することが示された。そのため、RESTモデルを用いた調査において、複数の有効撮影範囲形で得られたデータを用いた個体密度推定は推奨されず、有効撮影範囲形ごとに推定を行うべきであると考えられる。