| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-011  (Poster presentation)

ニホンジカの密度指標としての自動撮影カメラと糞塊数の比較
Difference between camera trap and pellet group count as abundance indices of sika deer

*青山祐輔(京都大学), 高原泰生(京都大学), 幸田良介(大阪環農水研), 石塚譲(大阪環農水研), 高柳敦(京都大学)
*Yusuke AOYAMA(Kyoto Univ.), Taisei TAKAHARA(Kyoto Univ.), Ryosuke KODA(RIEAF, Osaka), Yuzuru ISHIZUKA(RIEAF, Osaka), Atsushi TAKAYANAGI(Kyoto Univ.)

ニホンジカの管理計画を立てる上で生息密度を正確にモニタリングすることが必要である。自動撮影カメラを用いるカメラトラップ法はニホンジカの空間分布の季節変化を把握する手法として用いられ、糞塊数から個体数を推定する糞塊法は広範囲の密度推定に用いられる手法だが、両者の関係は明らかではない。本研究では1. ニホンジカの空間分布における季節変化を示す手法として糞塊法とカメラトラップ法を比較し、2. 撮影頻度の季節変化に対するニホンジカの活動状況の影響を調べた。
調査地は大阪府の箕面国有林およびその周辺の森林とした。調査地内に4m×50mのプロットを28ヶ所設定し、糞塊法の一つである糞塊除去法を用いてニホンジカの生息密度を推定した。同時に自動撮影カメラを28ヶ所(内18ヶ所が糞塊除去法と同所)に設置し、静止画(22ヶ所)または30秒の動画(6ヶ所)で撮影されたニホンジカの個体数から撮影頻度を求めた。糞塊除去法で得られた生息密度とカメラトラップ法で得られた撮影頻度をREM法の密度推定式に適用し、ニホンジカの一日の移動速度を推定した。また撮影時刻から活動時間割合を推定した。動画は一定の撮影範囲(1.58m2)を設定し、そこに滞在する時間を計測した。調査は、2019年11月~12月(初冬)と2020年1月~2月(晩冬)に行った。
糞塊除去法によって推定された調査地全体の生息密度は、初冬の17.6頭/km2から晩冬の24.5頭/km2へと増加した。一方、調査地全体の撮影頻度は初冬の2.41頭/台・日から晩冬の1.65頭/台・日へと減少した。一日の移動速度、活動時間割合、滞在時間のうち活動時間割合で初冬から晩冬で有意に減少していた。これらから1. 撮影頻度の季節変化は必ずしも生息密度を表していないこと、2. 初冬から晩冬にかけてニホンジカの活動時間割合が減少したことで撮影頻度が減少した可能性が示唆された。


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