| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-025  (Poster presentation)

草原生態系におけるゴミムシ類の群集構造と環境評価への利用
Community structure of ground beetle on grassland ecosystem and their use for environmental evaluation

*本間政人(信州大院・総合理工研), 大窪久美子(信州大学農学部)
*Masato HONMA(Shinshu Univ., Grad. Sch.), Kumiko OKUBO(Shinshu Univ.)

近年、二次的自然の中でも半自然草原における生物多様性の低下が問題となっており、現状把握のためには、指標生物による環境評価が有効であると考えられる。一方、これまで指標生物の候補に挙げられてきたゴミムシ類(オサムシ科)は移動性が低く、幅広い環境に生息していることから更なる利用が期待されている。しかし、先行研究の多くは森林や河川敷等で行われており、半自然草原に成立するゴミムシ類の群集構造や環境評価に関する研究は少ない。そこで、本研究の目的は本州中部を代表する半自然草原が残存する霧ヶ峰高原(長野県)において本分類群の群集構造を明らかにするとともに、環境評価への利用について検討することとした。
 霧ヶ峰高原において調査区は草原の6区と森林の2区の計8区とした。なお、各地区の標高は1,500m~1,925mである。群集調査と立地環境調査は2020年4月下旬~10月下旬に実施し、各調査区の個体数等を用いて比較した。さらにTWINSPAN解析より、本分類群の環境指標性を検討した。調査期間中、ゴミムシ類は1科23属57種5,200個体を得た。群集の多様性は全体的に高く、草原と森林間の差異は小さかった。さらにTWINSPAN解析等では、相観的に類似した草原植生であっても、個々の立地環境条件に応じて群集の組成と構造は異なっていた。
 以上、巨視的には同様な環境下においてもミクロハビタットの差異に応じて、ゴミムシ類群集の組成と構造は異なることが明らかとなった。よって、本分類群は衰退が危惧される半自然草原においても環境指標として有用であることが示された。なお、環境指標の候補としては、先行研究で言及された属や種に加えて、新たにコクロナガオサムシ等は森林、オオキンナガゴミムシ等は草原の指標種として利用可能であることが示唆された。なお本研究はJSPS科研費 JP19K06107の助成を受けたものである。


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