| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-026  (Poster presentation)

腐肉に集まる昆虫の種相及び個体数は微生物やウジを排除した場合どう変わるのか?
How do the exclusion of maggots and microbes affect necrophagous insect assemblages on vertebrate carrion?

*松島義治(日大・生物資源), 橋詰茜(日大・生物資源), 幸田良介(大阪・環農水研), 中島啓裕(日大・生物資源)
*Yoshiharu MATSUSHIMA(Nihon University), Akane HASHIZUME(Nihon University), Ryosuke KODA(RIEAF, Osaka), Yoshihiro NAKASHIMA(Nihon University)

「遷移」は,生態学における最も古い概念の一つであり,環境条件の変化に伴う生物群集の方向性を持った時間変化を指す.遷移は,死肉に集まる昆虫群集においても見られることが知られており,植生遷移とともに多くの研究の対象となってきた.しかし,そのメカニズムの解明については不十分なままである.従来の研究は,腐肉の状態(とくに腐敗度)に対する選好性が昆虫種間で異なること,この結果として種の時間変化が生じることを前提としてきた.しかし,見た目上の種の移り変わりは,他のメカニズムによっても起こりうる.例えば,昆虫種間で移動能力や発見能力に差があり,どの種も新鮮肉を好むにもかかわらず,死肉資源に到達できるタイミングが異なるだけかもしれない.本研究では,腐敗度が異なる肉を実験的に設置することで,①腐肉の状態に対する選好性の違いが種間において存在すること,さらに,②その腐肉の状態の時間変化は微生物によって介在されることを確かめた.北海道二海郡八雲町において,次の6種類の肉を直径1mの円上に設置した.(1)肉+微生物あり+ウジあり,(2)毎日交換する肉,(3)肉+微生物あり+ウジなし,(4)肉+微生物なし+ウジなし,(5)肉+微生物なし+ウジあり,(6)肉なし.これを50か所に反復し,設置から5日後まで毎日,来訪した昆虫を採取した.この結果,肉の腐敗が進行するともに種が移り変わるのに対し,毎日交換した新鮮肉では,種の時間変化は見られなかった.また,抗生物質により微生物の増殖を抑制した肉とそうでない肉の間では,種組成の変化が有意に異なっていた.これらのことから,腐肉における昆虫群集の遷移パターンは微生物の存在によって影響されているのではないかと考えられた.


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