| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-029 (Poster presentation)
生態系において、捕食-被食関係は様々な生態系に普遍的に存在し、これまで生態学の中心的課題として研究が蓄積されてきた。近年、次世代シーケンサーの普及により、DNA情報をもとにした食物網解析が行われている。なかでもDNAメタバーコーディング技術を用いた研究は、一度に数百、数千のサンプルから餌生物の情報が得られるため、効率的に食物網構造を俯瞰することが可能である。
陸上生態系のなかでもクモは、昆虫類を捕食するジェネラリストであり、様々な節足動物の個体数を調節する中間的捕食者と言われている。また生食連鎖と腐食連鎖を繋いでいるとされ、クモは陸上生態系における食物網において重要な役割を担っている。
本研究では、DNAメタバーコーディング技術を用いて、草原性クモ群集の食物網構造を網羅的に明らかにすることを目的とした。またその食物網構造が季節を通じてどのように変化するのかについて研究を行った。京都大学生態学研究センターの圃場の一画を調査地とし、2018年4月から11月にかけて毎月採集を行い、採集された48種2274個体のクモを対象にDNA解析による餌生物の検出を行った。その結果、合計1030の餌生物OTU が検出された。各月ごとにおけるクモ群集の被食-捕食ネットワークについてモジュール解析を行ったところ、春から夏は多数のモジュールに食物網が分割された構造を示していたが、9月以降の秋にかけてひとつのモジュールに収束することが明らかとなった。これは秋に餌生物の種数が減少し、複数種のクモが餌生物を共有していることを示唆している。各クモ種について餌の選好性を評価したところ、選好性がみられる種と、反対に選好性がみられない種(ジェネラリスト)が存在することが示唆された。