| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-031  (Poster presentation)

ニホンジカ(Cervus nippon)環境DNAの種特異的検出系の開発
Development of a species-specific eDNA assay to detect sika deer (Cervus nippon)

*石坂恵規(神戸大・発達), 中川光(京都大・東南研), 高柳敦(京都大・院・農学), 源利文(神戸大・院・人間環境)
*Keiki ISHIZAKA(Fac Human Dev, Kobe U), Hikaru NAKAGAWA(CSEAS, Kyoto U), Atsushi TAKAYANAGI(Grad Sc Agri, Kyoto U), Toshifumi MINAMOTO(Grad Sc Human Dev Env, Kobe U)

近年、森林の劣化の一因としてシカの個体数増加が世界中で問題になっている。シカによる林床植生の大量消費は、裸地化した斜面を作り、河川への堆積物流入を増加させる。これらの堆積物流入の増加は川底の物理的特性の変化を介して、大型無脊椎動物集団の群集構造に影響を及ぼす。その為シカの個体数増加は、陸域生態系だけでなく、河川生態系にも影響を与える可能性がある。日本においても、ニホンジカ(Cervus nippon)は1990年以来、ますます過剰になっている。環境DNA分析手法は両生類、魚類、哺乳類など幅広い分類群を対象に、研究と社会実装が進められている環境モニタリング手法である。さらに超並列シーケンサーを用いて分類群全体を同時に検出する、環境DNAメタバーコーディング法も魚類や哺乳類、水生昆虫などで開発されている。これらの手法を用いることでシカと魚類相、水生昆虫相を同時にモニタリングすることが期待される。しかしながら、哺乳類を対象とした環境DNA分析手法はカワウソや鯨類など、水生種や半水生種を中心に研究されており、陸生哺乳類を対象とした研究は少ない。そこで本研究では、大型陸生哺乳類であるニホンジカを対象に、種内多型を考慮した種特異的検出系をミトコンドリアシトクロームb領域に開発した。野外環境での実証の為、京都府中部に位置する芦生研究林の由良川源流域で68回のサンプリングを行い、24サンプルからニホンジカDNAの検出に成功した。さらにシーケンシングの結果から、ニホンジカの種内多型を検出することに成功した。この結果から環境DNA分析手法の大型陸生哺乳類への応用可能性が示された。また、環境DNA分析手法で種内多型の分布情報が得られることが示された。


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