| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-032  (Poster presentation)

捕食者の位置する栄養段階は何で決まるか?: 渓流の腐食食物網における検討
What determines the trophic position of predatory macroinvertebrates in detritus-based food webs of forest streams.

*太刀掛脩平, 加賀谷隆, 則定真利子(東京大学)
*Shuhei TACHIKAKE, Takashi KAGAYA, Mariko NORISADA(Univ. of Tokyo)

森林渓流では、渓畔から流入する樹木リターが河川地形に応じてパッチ状に堆積し、それらのリターパッチには水生昆虫を主とする様々な底生動物が生息している。これらの底生動物のうち、腐食者によるリター分解機能の理解は進んでいるが、捕食者の機能については理解が不十分である。腐食食物網では、優占的な捕食者の位置する栄養段階や食物連鎖長に応じて、群集の安定性やリター分解に対する栄養カスケード効果は異なると考えられる。さらに、リターパッチの捕食者には、付着藻類を基礎とする生食食物網に由来し、パッチ外部から流入する餌資源に依存する種が存在する可能性がある。そのような捕食者種の栄養カスケード効果は生食食物網に放散すると考えられる。そこで本研究では、森林渓流のリターパッチの腐食食物網における捕食者の機能を理解するために、炭素・窒素安定同位体比分析を用いて、捕食者各種について栄養段階上の相対的位置と基礎資源としての付着藻類の寄与を明らかにするとともに、種や季節による栄養段階上の位置の変異を規定する要因を検討することを目的とした。2020年1月から9月に隣接する2渓流で底生動物各種、リター、付着藻類を採取し、安定同位体比を測定した。捕食者種の栄養段階上の位置を指標する窒素同位体比と捕食者の体サイズや移動性、生息場サイズ(パッチ面積)の季節変動との関係を解析した。その結果、以下のことが示された;①捕食者の栄養段階上の位置には、1段階以上の種間変異が認められる。②捕食者各種に対する付着藻類の寄与は、最小でも30~60%と評価される。③捕食者の栄養段階上の位置に、体サイズとの正の関係は認められない。④捕食者の栄養段階上の位置は、高移動性の種で高い。⑤頂点捕食者の栄養段階上の位置は、生息場サイズが大きい季節ほど高い。発表ではこれらの結果を踏まえ、捕食者の機能について考察を示す予定である。


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