| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-034 (Poster presentation)
代表的な植食性甲虫類であるハムシ類は国内に約700種が知られ、各種の寄主植物が限られることや移動性の乏しさなどから、群集の組成は局所的な植生変化を反映するとされる。また、本分類群とニッチが同様で種数の豊富な植食性甲虫類として、他にゾウムシ類とタマムシ類が挙げられる。本研究では、生物多様性が豊富な長野県上伊那地方において、これら植食性甲虫類群集の組成と構造を明らかにし、本群集の指標生物としての有用性を検討することを目的とした。
調査は長野県上伊那地方、木曽山脈の山麓部3地点(標高833m~973m)で行った。各調査地に全長約1.5kmのルートを設定し、各ルートを500m程度の3区画に区分した。
群集調査は2020年5月~10月に各調査地の区画毎に行い、ライントランセクト法を用いて設定したルート左右の植物を捕虫網で掬いとることで植食性甲虫類を捕獲し、種名と個体数をカウントした。調査は地表からの高さ1.5mを基準に上層と下層で区分して行った。
群集調査では3分類群の合計で9科367種6334個体を記録した。ほとんどの区画において下層の種数は上層より多く、多様度も下層でより高かった。TWINSPAN解析の結果、階層別の調査区画は第一分割で上層と下層に二分され、第三分割までで植生環境などにより7の群集型に分類された。種群は7つに分類され、各種の食性と出現傾向をもとに上層種、共通種、下層種の3種群にまとめられた。
下層は上層に比べて草本植物を中心とした多様な植物種から構成される場合が多く、植食性甲虫類各種の寄主となる植物も豊富に存在したため、群集は下層でより多様化したと考えられた。TWINSPAN解析の結果においても植食性甲虫類は階層ごとの植生の違いを明確に反映していたため、森林環境を階層毎に評価することを可能にする分類群であり、新たな指標生物群と調査手法の提案がなされた。