| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-038 (Poster presentation)
陸生カメムシ類(以下カメムシ類)は分類群、餌資源、生息環境が多様なことから環境指標生物としての有用性が示唆されている。しかしカメムシ類の研究は農林業害や益虫に偏っているのが現状である。そこで本研究ではカメムシ類の群集の組成と構造の解明、環境指標生物としての有用性を検討することを目的とした。
調査地は伊那盆地に位置する信大農学部キャンパスで5地点、三峰川下流部で7地点における森林および草地環境を選定した。群集調査は2020年3月から12月にかけてルッキングによる定性的採集を10回,同年4月から11月にスウィーピング,FIT(衝突板トラップ)によるカメムシ類の定量的採集を各8回行った。また生息地とカメムシ類の関係性を把握するために植生および立地環境調査を実施した。
カメムシ類は全調査期間中に131種、群集調査では127種を記録、定量的調査では100種1269個体が得られた。希少種7種(1種は群集調査外)、外来種3種を記録した。個体数が最大であったのは希少種のヒメカメムシで、河川敷で顕著だった。外来種の1種は2018年に国内で初確認されたツマベニヒメナガカメムシだった。カメムシ類の種数・個体数は森林より草地で多く、河畔林の林縁草地の個体数は両環境の中間程度であった。TWINSPAN解析の結果、12調査地点は5群集型、出現種は15種群に分類され、各群集型は植生や立地環境を反映した。
本研究では本調査地域はカメムシ類の生息地として特異性や重要性を有すことが示された。特に河川敷では草地性の希少種の生息環境として保全上の重要性が挙げられた。またハリエンジュといった外来木本植物によるカメムシ類の群集構造の変化、外来カメムシ類による在来カメムシ類や餌資源となる植物への負の影響も懸念された。指標生物としては、植生や立地環境への明瞭な関係性から河川敷のカメムシ類で有用性を提案することができた。