| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-043  (Poster presentation)

ボルネオ島キナバル山において哺乳動物の垂直分布に土壌が与える影響
Influence of geological substrates for vertical distribution of mammals on Mt. Kinabalu in Borneo

*長野秀美, 北山兼弘(京大・農・森林生態)
*Hidemi NAGANO, Kanehiro KITAYAMA(Kyoto Univ. Forest Ecology)

標高に沿った哺乳動物群集の変化の要因を明らかにすることは、哺乳動物の分布様式を理解する上で重要である。ボルネオ島に位置するキナバル山は、標高700mから3500mの森林限界まで連続した原生林が保存されており、母岩が堆積岩の森林と蛇紋岩の森林が混在する。この2つ母岩の森林の標高700m、1700m、1800m(堆積岩のみ)、2700m、3100mに8台ずつ計72台のカメラトラップを1年間設置した。また、各カメラ地点で30cm四方深さ10cmの土壌に生息する土壌動物の重量を測定した。撮影された中・大型哺乳動物についてnMDS解析を行ったところ、哺乳動物群集は標高に沿って変化することが示された。また、中標高の堆積岩と蛇紋岩では群集組成が大きく異なった。標高に沿った種数と各動物の撮影頻度については、果実食者は両母岩ともに高標高ほど減少した。一方、肉食者と植食者は標高に沿って種が入れ替わったため、種数は大きく変化しなかった。また、土壌動物は、両母岩とも高標高で増加した。標高に沿った果実生産量は、両母岩とも標高が高くなるほど減少するが、中標高では、堆積岩上の森林に比べ蛇紋岩上の森林で果実生産量が急激に減少し(Kitayama et al. 2015)、生産される果実の種類も両森林で大きく異なる(Aiba & Kitayama 1999)。このことが、両母岩でみられた高標高での果実食者の種数と撮影頻度の減少と、中標高での母岩間の群集組成の違いに影響していると考えられる。また、高標高での土壌動物の増加が、肉食者の種数が高標高でも低標高と同じように維持される要因と考えられる。これらのことから、生産される果実の質や量が母岩によって異なることで母材間で哺乳動物の群集組成に差異がある標高帯が存在するものの、標高に沿った哺乳動物種の頻度や種数は両母材ともに同じパターンを示し、そのことは、餌資源の標高変化が母岩間で類似していることによることが示唆された。


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