| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-046  (Poster presentation)

都市化が筑波山周辺域の中・大型哺乳類に与える影響 【B】
Effects of urbanization on medium-sized and large mammals in the lowland area around Mt. Tsukuba 【B】

*岩澤遥(筑波大学), 斎藤昌幸(山形大学), 佐伯いく代(筑波大学)
*Haruka IWASAWA(University of Tsukuba), Masayuki SAITO(Yamagata University), Ikuyo SAEKI(University of Tsukuba)

近年、世界的に都市化が進行しており、野生生物の分布や行動に様々な影響を与
えている。中でも哺乳類は、食物網の中でも上位に位置するものが多いため、他
の生物群に与える影響が大きい。しかし、都市化と哺乳類に関する研究は北米と
ヨーロッパに集中しており、人口密度の高いアジアにおける研究例は少ない。そ
のような中、つくば市付近には、筑波山周辺にある連続した森林と、市街地内の
孤立林のどちらも存在しており、都市化と哺乳類の関係を調べる上で適した環境
が広がっている。そこで本研究では、筑波山麓から都市化の進む平野部にかけて、
カメラトラップ調査を実施し、哺乳類の生息状況にどのような違いがみられるか
を明らかにすることを目的とした。筑波山麓からつくば市街にかけ、24ヶ所の森
林内に自動撮影カメラを設置した。さらに、各調査地点を森林の連続性、植生タ
イプ、近隣の交通量で分類し、撮影頻度との関係を分析した。その結果、合計
525回、10種の哺乳類が撮影された。うちイノシシ、ニホンアナグマ、ニホンテ
ン、ニホンリスはほぼ連続林のみで撮影された。一方、タヌキ、ニホンノウサギ、
ハクビシンは連続林・孤立林のどちらでも多く撮影され、特定外来生物であるア
ライグマは孤立林での撮影頻度の方が高かった。交通量に関しては、幹線道路に
近く騒音の大きな地点ほどイノシシやニホンアナグマの撮影頻度が低下したが、
タヌキやアライグマはそのような場所でも高い頻度で記録された。植生タイプに
ついては、自然林や混交林での撮影頻度が高くなることを予測したが、アライグ
マのように人工林での撮影頻度のほうが高い種もみられた。日周活動との関係を
調べたところ、タヌキは森林の連続性、交通量、植生タイプなどが異なると、撮
影時刻の分布に統計的に有意な差がみられた。以上のことから、都市化は哺乳類
の分布や活動時間に影響を与えるが、応答のパターンは種によって異なることが
示された。


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