| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-047  (Poster presentation)

自動撮影カメラの垂直設置によるイノシシの体サイズ推定
Estimation of the body size of wild boars by vertical camera traps in Boso, Chiba

*齊藤寛太, 中島啓裕(日本大学)
*Kanta SAITO, Yoshihiro NAKASHIMA(Nihon Univ.)

野生動物の体サイズは,種の正確な同定や,栄養状態の把握を行ううえで重要な情報である.体サイズの情報を取得するには,これまで捕獲による計測が行われてきた.しかし,捕獲がもたらす野生動物への負担は大きく,調査員にも大きな危険を伴うため,非侵襲的な推定方法の確立が必要とされてきた. 近年,中大型地上性哺乳類の研究に,自動撮影カメラが広く用いられるようになっている.自動撮影カメラを地上から見下ろすように設置すれば(以下,垂直カメラ),動物とカメラの距離が一定に保たれるため,撮影された動物個体の体サイズを推定することが可能なはずである.そこで本研究では,中大型地上性動物を対象とした垂直カメラの効率的な設置方法を考案し,その精度の検証を行った.さらに,確立された手法を千葉県房総半島南部地域に生息するイノシシに適用し,その肥満度(体長と体幅の比)の推定を行った.垂直カメラは,金属製のL字支柱と林業用の携帯梯子を用いて,約4mの高さに設置した.サイズ推定の精度検証は,3個体のイエイヌを対象として行った.垂直カメラにより撮影されたイエイヌの体長と体幅の推定を各個体3回ずつ行った.その後,体長と体幅の比を求め,各個体の実測値の比と比較を行った.比を用いることで,実測値との平均誤差は1.6%±1.3%(N=9)と実用的な精度での推定ができた.また,比を用いず,体長のみ推定した場合,平均誤差は10.5%±2.0%(N=9)と大きなずれが生じた.イノシシを対象とした調査は,30地点に垂直カメラの設置をした.垂直カメラから得られたイノシシの撮影データは,全身が撮影された成獣個体の体長と体幅を推定し,比を計算した.その比を,肥満度の指標とした.解析は,線形ガウス状態空間モデル化を行い,肥満度の季節変動の推定を行った.肥満度の推定は,夏季において低下し,秋季に向上,冬季から春季にかけては,大きく変動しないという明確なパターンがあることが確認された.


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