| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-049  (Poster presentation)

本州中部・霧ヶ峰高原におけるアリ相および生息アリ類の環境指標性評価
Ant fauna on Kirigamine Highlands in the mountainous region of central Honshu and Evaluation of bio-indicator using ant communities

*植野侃太朗, 大窪久美子(信州大学農学部)
*Kantaro UENO, Kumiko OKUBO(Shinshu Univ.)

1960年代以降、半自然草原の減少に伴い草原環境における生物多様性の保全が課題とされている。しかしアリ類群集の半自然草原における指標性研究は進んでおらず、群集の組成や構造に関する基礎的知見も乏しいのが現状である。そこで本研究では、本州中部を代表する半自然草原である霧ヶ峰高原にてアリ類群集の環境指標性および生物多様性の評価を検討することを目的とした。一定の範囲内にて植生が連続的に変化する10地区を選定し、各地区に8m×8mのプロットを5個、ベルトトランセクト状に設置した。各地区においてアリ類の群集調査および植生調査、土壌条件、光環境調査を実施した。アリ類は両年で4亜科15属24種が確認された。TWINSPAN解析の結果、地区単位では6群集型と7種群、プロット単位では6群集型と8種群に分類され、前者は標高、後者は植生を主要因として分割されたと考えられた。DCA解析の結果、各プロットは森林、草原、林縁・半裸地、低木が優占する草原の順に配置された。各出現種は、森林性種、草原性種と林縁性種と共通種、草原環境における共通種、森林から草原まで生息する種の順に配置された。頭山・山本(1997)は、生息するアリ類は標高及び緯度、ついで植生によって決定されるとした。本研究では半自然草原におけるアリ類群集が、TWINSPAN解析による地区単位では標高、プロット単位では植生により区分されたことから、先の決定要因を裏付けると考えた。アリ類は、植生の階層構造が複雑化するにつれて種数が増加するとされる。しかし、武田ほか(1982)では森林よりも草原においてアリ類の生息種数が多い傾向を示した。霧ヶ峰においても同様の傾向がみとめられ、生産量が大きく植物高も大きいススキなどの草本が地表部の環境条件を安定させている可能性がある。本研究はJSPS科研費 JP19K06107の助成を受けたものである。


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