| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-054  (Poster presentation)

小笠原諸島の無人島における、海鳥の巣材に含まれる種子の種構成
Species composition of seeds found in seabirds' nests collected from uninhabited islands in Ogasawara

*水越かのん(筑波大学), 上條隆志(筑波大学), 川上和人(森林総合研究所)
*Kanon MIZUKOSHI(Univ. of Tsukuba), Takashi KAMIJO(Univ. of Tsukuba), Kazuto KAWAKAMI(FFPRI)

海洋島の生物相は,大陸あるいは他島からの生物の移入を経て形成される.島の生物相の成立を理解する上で,海洋島への生物移入プロセスの解明は重要である.植物は海流や風,鳥類によって種子や胞子を分散し,特に高い飛翔能力を持つ海鳥による種子の付着散布は極端な長距離分散を可能にすると考えられてきた.研究事例は少ないものの,海洋島で繁殖する海鳥の体に実際に植物の種子が付着していた報告も存在している.そこで本研究では海鳥による種子分散を検討するため海鳥の体へ種子が付着するプロセスに着目した.海鳥の巣は主に植物から構成され,巣材中には種子が含まれている可能性が高く,それら種子が営巣や抱卵を通じて海鳥に付着する可能性がある.そこで本研究では海鳥の巣内に含まれる種子の組成とその特徴を明らかにすることを目的とした.
 小笠原諸島の鳥島,媒島,北硫黄島,南硫黄島,西之島の無人島6島から採集した海鳥(カツオドリ、オナガミズナギドリ、クロアシアホウドリ)の巣材90個を対象に分析を行った.巣材から取り出した種子は形態的特徴をもとに同定し, 散布型や種子サイズ等の特徴を記録した.
 全サンプルのうち88%の巣の中から植物の種子が出現した.総出現種数は不明種を除く21種で,うち9種が外来種(自然帰化種とされるものも含む), 1種が小笠原固有種であった. 散布型では, 付着散布を行う種の他にも被食散布や海流散布を行う種も出現した.巣材からは先行事例で海鳥の羽毛への付着が報告されていたカラクサナズナ, ケカタバミ, イヌホオズキ, ムラサキヒゲシバが出現した. また付着散布種子として、ムニンキケマン,オヒシバ,イヌビエが確認された.


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