| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-055  (Poster presentation)

定花性の進化:訪花者の学習能力と採餌環境に着目した採餌行動のシミュレーション
Evolution of floral constancy: simulation of foraging behavior focusing on the learning ability of pollinators and flower availability in the habitat

*茂見彩花, 酒井聡樹(東北大学)
*Ayaka MOMI, Satoki SAKAI(Tohoku Univ.)

 蜜や花粉を集める訪花者の中には、同種の植物を連続して訪問する性質である定花性を示すものがいる。一種の植物の情報を短期記憶に入れて訪問することで、花の探索や処理にかかる時間が短縮されると言われている。その一方で、報酬のある他の植物を見逃すという点で不利である。これら有利点・不利点は採餌環境によって異なり、それが、定花性の有無やその程度の進化に影響するのではないか。本研究では、シミュレーションモデルを用いて、採餌する植物集団の環境要因(植物の頻度、最大蜜量の差、分布様式、花間の移動コスト)が訪花者の最適な定花性の程度に与える影響を調べた。
 2種類の植物からなる集団での1個体の訪花者による最適採餌のシミュレーションを行った。 2種類の植物はある頻度で分布している。植物の分布様式はランダム分布、偏りの小さい集中分布、偏りの大きい集中分布の3通りのいずれかである。また、植物の蜜はある確率で空になっている。その確率は植物の頻度(集中分布の場合は局所的な頻度)と最大蜜量に相関し、植物種によって異なりうる。訪花者はある一定時間吸蜜行動を行う。吸蜜行動の時間は花間の移動と吸蜜に割かれる。訪花者が同種の植物を連続して訪問する場合には、その移動や吸蜜にかかる時間が学習によって短縮される。訪花者は、2種類の植物それぞれについて直近数花内での頻度と平均吸蜜量を情報として持つ。そして、どちらの植物で吸蜜するのかを決める。一定の蜜量を獲得するのにかかる時間が最小となる値を最適な採餌戦略として、集団内の植物の頻度、最大蜜量の差、分布様式、花間の移動コストが異なるそれぞれの条件について、最適な採餌戦略での定花性の程度を調べた。
 シミュレーションの結果、定花性が有利となる条件、非定花性が有利となる条件、その中間的な条件が見られた。発表では、採餌環境の要因がこれらの条件の違いに与える影響を調べ議論する。


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