| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-057  (Poster presentation)

タニウツギ花粉の棘と粘着物質は生育標高によって異なるか?送粉者に応じた進化の検証
Does Weigela hortensis pollen differ in spines or pollenkitt along altitudinal gradients?—A test for evolution with pollinating partners

*長谷川拓也, 板垣智之, 酒井聡樹(東北大・院・生命科学)
*Takuya HASEGAWA, Tomoyuki ITAGAKI, Satoki SAKAI(Life Sci., Tohoku Univ.)

花粉表面の棘や粘着物質には種間多様性が知られている。棘や粘着物質の存在は訪花昆虫への付着しやすさに影響することが実験的に明らかにされており、送粉者の種類に応じた花粉形態の進化の可能性が報告されている。植物種内においても、送粉者の種類や数が異なれば花粉の棘や粘着物質に多様性が見られるのではないか。本研究では、標高による送粉者相の違いに着目して、スイカズラ科タニウツギの花粉の形態が生育標高によって異なるのかを調べた。
宮城県泉ヶ岳の標高の異なる4集団(標高277・518・650・812 m地点)において、タニウツギの花に訪れる昆虫の観察と花粉の採取を行った。走査型電子顕微鏡を用いて、花粉表面の棘の長さと密度を計測した。有機溶媒を用いて花粉表面の脂質(粘着物質)を分離し定量することで、花粉重に占める脂質重の割合を求めた。また、棘や粘着物資の生産には資源を要すると考えられる。花粉の棘・粘着物質・大きさへの資源投資戦略を調べるため、花粉の直径と花あたり花粉生産数を計測した。
単位時間あたりに花に訪れる昆虫は、小型のハチが最も多く、その次にハエ目(主にセダカコガシラアブ)が多かった。マルハナバチやミツバチは比較的少なかった。標高が高くなるにつれて、小型のハチとハエ目は増加し、マルハナバチやミツバチは減少した。花粉表面の粘着物質重の割合の標高間差は小さく、277 m集団で平均およそ9%、812 m集団で平均およそ8%であったが、標高が高くなるにつれて小さくなる傾向が見られた。花粉生産数の標高に依存した変化は見られず、粘着物質重の割合との相関もなかった。棘のデータは現在解析中である(ポスターでは棘に関する結果も紹介する)。
本研究の結果は、他の花形質と同様に花粉形態も、自然淘汰による集団間分化が起こりうることを示唆している。そしてその自然淘汰には送粉者相が関係している可能性がある。


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